就活のグループディスカッションが「百害あって一利なし」は本当に正しいか?
まずはこの記事を読んで見てほしい。とても興味深い内容だと思う。
いきなり余談ではあるが、こういう「賛否両論」を巻き起こす記事こそがバズる。
この記事の筆者がその意図で書いたかどうかはわからないし、筆者の主張が100%本音であるかもわからないが、就活業界に一石を投じるこのような内容を書くことができる筆者は素晴らしいと思う。
さて。筆者のいくつかの主張に関し、あなたはどう思っただろうか?
あなたが就活生ならば、「なるほど」と思わされる点がたくさんあったと思う。
実際に、グループディスカッションを課す企業への対策は、この記事で書かれている内容を実践することが一番実践的だと思う。
それは僕自身の経験を通してもそう思うし、ビジネスパーソンとして見てもその通りだと思う。
一方で、あなたが企業側、人事としての立場だった場合はいかがだろうか。
最もなことを書いていると感じたはずだが、果たしてこの記事が主張している「っぽい学生」と「本質的に優秀な学生」をどのように見れば良いのかと考えるに違いない。
実際の日本企業のほとんどにおいては、「早い、うまい、それっぽい」つまりは要領のいい新人を「仕事ができる」と認識する。
例えばそれが営業職であったとして、本質的に物事を深くかつ多角的に考える新人と、言われたことをそれっぽく要領よくこなす新人がいたとして、あなたの組織はどちらを評価するか?ということである。
おそらく、ほとんどの組織は後者(要領のいい人)の側を評価するだろう。
しかし、中長期的に組織を考えたときに、どのような人材を求めているのか?と考えると、答えは変わってくる可能性だって十分にある。
採用の設計とプロセスがしっかりしていれば、っぽい人は受からない
話が脱線したが、いわゆる「っぽい人」がなぜ受かってしまうのかといえば、それは採用する側に問題があるとしか言いようがないと思う。
要は、採用設計とプロセスが甘いのだ。
人事といえど、「なんとなく」という「KKD(勘・経験・度胸)」で選考をしてしまっているがゆえ、結果的に「優秀そうに見える学生」が通過するというわけである。
なんとなく「時間内に答えを出し、それっぽいプレゼンをしたから」「チームで結果を出せそうだから」というような基準で選考をすれば、それこそ「優秀そうな学生」が受かるのは至極当然のことだと言える。
就活生にしたって、これだけ情報が溢れている社会なわけで、ある一定の対策をしてくるし、慣れだって積んでいる。
と同時に、そういうハウツーではなく、本質的なトレーニングをすることを考えた際に、どのような視点であればいいのか。
グルディスを控えている就活生、あるいはそれを評価する人事の側は、どのような見方で臨めばいいのか?というところを、僕なりの視点で書きたいと思う。
就活生は、グループ全体で通過することを考える
まず、就活生の視点でいうと、以前にも書いたが、グルディスを通過する人というのは「グループ全員で通過しようとする人」である。
グループディスカッションというのは、集団面接や個人面接では測ることができない「チームを巻き込んで働く能力」を見ているわけで、チームで次に進もうとというスタンスがあるというのが前提になってくる。
「チームを巻き込んで働く能力」というのは、例えば、周りの状況を適切に把握する「状況把握能力」であり、相手の意見をきちんと聞く「傾聴力」。
その上で他者と自分との違いを見定め(柔軟性)、それを持って自身の意見を発言していく力(発信力)が求められる。
議題の設定が評価のポイント
一方で、評価する側にとっては、事前にどれだけきちんと設計ができるかというのはかなり大きなポイントになる。
特に重要なのが「議題の設定」である。
議題のパターンとして分けると、大きく2つ。
1つは「課題解決型」であり、もう1つは「自由討論型」である。
そしてこの2つは、見るポイントと評価するポイントが異なる。
課題解決型の議題というのは、例えば「うちの会社の売り上げを3年で2倍にするには、どうすればいいか?」や「今の20代と、上司の世代(40〜50代)が密なコミュニケーションを図るために画期的な方法を提案して下さい」のような議論。
自由討論型とは、よくあるのが「このチームで無人島から脱出をするには、どのような戦略を取ればいいのか?」というような例。
コンサル的な話でいうと、「課題解決型」の議論というのはMECEの思考です。
要は論理的な思考によって抜け漏れがなく正しく議論を進め、現状を適切に踏まえた上で提案に筋が通っているのか?というところがポイント。
「自由討論型」の議論のポイントは、いかに細かく合意形成をとって物事を前に進めていけるか?というところにある。
特に最初の定義づけ〜各所における定義づけをチームとして合意を持って話を進めていくというのは、社会人でも結構難しい。
この議論の場合、全体を俯瞰して捉え、流れを大きく促すような適切な発言をする子が優秀であることが多い。
ポイントはやっぱり適切な議題設定と、何をどのように見て評価するのか?というプロセスの設計にある。
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さて。一番最初の話に戻ると、僕が思うに、選考(特に初期)において、グループディスカッションは有効な手段である。
ただし、見る側が適切なモノサシを持っているということが条件である。
誰にとって有効かといえば、一つはもちろん企業側(人事)であるが、同時に学生にとってもそうである。
適切なモノサシで測られ、フィードバックをもらえるというのは貴重であるし、何よりもグループディスカッションによってその企業の選考を受ける学生のレベル感を実感することができる。
たかが30分のグルディスであったとしても、有意義なものであると僕自身は思っている。
グループディスカッションが苦手という就活生もいるとは思うが、ちゃんとやれば、必ず次に進める。
一緒に臨んでいる同世代の就活生が、どういう人たちなのか?ということを見るのもまた、就活の楽しみだったりするはず。
存分に、味わってみてください。