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大人の少年で、僕はありたい。

大学で学問やっています。4年生。主に物理学。趣味は読書と、手紙を書くこと。好きなものは、雨の日とカフェオレ。人材業界に就職する新卒です。

ヒトリの夜の羽田空港。

日記 無題

 

ヒトリの夜の羽田空港は、何度経験しても慣れるものではない。

特に、最終便の出発を待つ空港の大きさは、虚しさに比例しているような気がしてならない。

昼間はあれだけ人で賑わっている場所も、夜になって人が少なくなると、途端にその空間だけが目立つようになる。

夜の時間のご飯処も、隣ではスマホ片手に、疲れを表したようなスーツを着たサラリーマンが蕎麦をすすっている。

向こう側では赤いタートルネックを着た一人きりの女性がカレーライスを食べている。

疲れた様子が伝わってくるサラリーマンの男性と、私は一人でもしゃんとしていますよ、と言わんばかりに背筋を伸ばしてスプーンを口に運ぶ女性とのコントラストが、妙に印象に残っていたりする。

 

あれほど空港の空気感が好きだったはずなのに、どうしてだろう。

あの場所に満ちているのは、自分の全身に少しずつ力が満たされて行くような感覚。それは、その場所がこれからの新たな挑戦の扉につながっているようで、そこを歩く人々がみな、それを一様に体現しているような気さえしてくる。

あの特別感と高揚感は、今まで感じたことのない武者震いを呼び起こすものだったりするけれど。

一方で、そこを出る飛行機を待つヒトリの夜の時間は、あの巨大な空間に自分の心が飲み込まれてしまいそうになって、わっと叫びたいほどの衝動が湧き上がってさえくる。

何度足を運んでみても、それは変わらないもの。

いつか、この感覚はなくなったりするのだろうか。

 

場面が変わる。

羽田から到着して、機内に灯りが灯る頃、イヤホンをつないで音楽を聞いていたスマホを取り出して、機内モードをオフにする。いつもの習慣。

しばらくすると、たくさんの通知が入ってくる。これもまた、いつものこと。

スクロールすることすら面倒で、適当に流して見たりする。なにせ今日は、、

 

数時間前にひとりぼっちで羽田から飛び立った僕は、そのまま別の世界へと足を踏み入れたような、そんな気さえしてくる。そのまま、どこか違うところへ。

たった数時間のことなのに、と軽い気だるさと同時に、いま僕自身とこのリアルな世界とを結ぶのは、目の前のスマホにとめどなく入ってくるたくさんの、そして無機質にしか感じられないような言葉しかなくて。

いま自分がどの世界に立っているのか、時々わからなくなる。立っている街も、そして、立っている世界も。

何も考えなくとも彼は、足早に飛行機を出て行く。到着した空港もまた、夜中近くになっていて、人はほとんどいない。

どこまでいっても、この空虚感が彼を飲み込もうとしているようで、たまらない気持ちになる。つい足早になってしまうのは、その波から逃れようとしているから。

 

 

再び、場面が変わる。

僕はまた、再び羽田からの飛行機に乗って、この街に帰って来た。

いつものようにスマホ片手に、足早に歩いている。ひと時でも、この暗さから抜け出したい。そんな想いを抱えつつ。

ふと、手元に入ってくる通知をスクロールしていく中で見つけた言葉が、その場にいるのかいないのか曖昧になりかけていた僕の身体に、一気に血を流し込んでくれる。

 

そこには、一人の人からのメッセージがあって。

おかえりなさい、と。そこには、そう書かれていた。

もう帰って来たかな?おかえりなさい。と。

 

嬉しかった。

ふと、あたたかい気持ちになれる。たった一言で。こんなにも嬉しいものかと。

そしてそのメッセージには、こんな風に続きが綴られていた。

ここ最近で書いたあなたのブログを読みました。

あなたの考えていることがすごく反映されていて、興味深かったです。

ほんとうに、いい文章を書くね。心にしみます。。

いつか、あなたが出版するときは、本を買って会いに行きます

その瞬間を楽しみにしてます。

と。

 

ヒトリの夜の羽田空港は、何度経験しても慣れるものではない。

少なくとも、今の僕にはどうやら、その時間と空間は、すごく心に痛い。

あの場所には、人々の中にある寂しさ、孤独感、空虚感の混ぜ合わせを取り込んだような空気が漂っている。

それはどこか、東京という大都会の街並みとリンクしているような気がするのだ。

たくさんの人が、無機質に通り過ぎて行くのを眺めていると、そう思えてならない。

あの場所には、夢と野望を持った人々。そしてそれらを見失い、居場所を見つけられない人たちの両方が、入り混じっている。

そしてその両方は、僕自身の中にあるものなのだけれど。

僕は、僕の道を一歩ずつ歩んで行くこと。ただ、それだけなのに。わかっているはずなのに、どうしても、何かに飲み込まれそうになる。

 

そんなとき、こうして誰かが言葉をかけてくれること。どこかに消えていってしまいそうな心に、今僕が立っている足元のこの場所をつなげてくれる、大切な人たちがいる。

帰ってこれる場所があって、家があって、待っていてくれる人がいる。

だからこそ僕は。

そんなことを考えながら、ひとりパソコンに向かっている。

今日はいい時間だった。