大人の少年で、僕はありたい。

2017年新卒で、人材業界に就職しました。 趣味は読書と、手紙を書くこと。 大人の少年で、僕はありたい。 好きなものは、雨の日とカフェオレ。

村山由佳『天使の梯子』

 

月灯りの下で、物想いにふけっていると、ふと頭をかすめる物語があります。

村山由佳さんが描いた『天使の梯子』という小説。

僕は昨日、ふと何かを思い出したように、感情の記憶が蘇ってきたように、いてもたってもいられず布団の中でこの小説を手に取っていました。そして今日、綺麗な月灯りを眺めていた時に、どうしても書かずにはいられなくなって、こうして夜中から言葉を綴っています。

 

僕がこの小説に出会ったのは、確か中学の頃。部活のない平日の学校帰りは、毎日通りにある本屋に立ち寄っていて、そこで出会った本。あの時買ったハードカバーのこの本を、今でも僕は持っています。

あの時から、もうすぐ10年が経とうとしているのだけれど、最初にこの本を読んだ時の感動と心の震えは、今でも鮮明に覚えていて。あれから、何度この本を読んだことだろうか。

 

宮沢賢治の『告別』という詩に出会ったのは、実はこの本が初めてでした。

ちょっと前に、この詩について書いた記事。

yuto.hatenadiary.jp

 

主人公のフルチンこと古幡慎一は大学時代、高校時代の教師で、当時片思いをしていた8歳年上の女性、斎藤夏姫さんに再会。再び恋に落ちるという物語。

シンプルなんだけれど、実は夏姫さんの過去と、この恋が混ざり合っていって、2つの物語が重なっていく、、という、すごく良くできた物語です。僕はどうやら、村山由佳さんの恋愛小説の世界観が、たまらなく好きらしい。彼女の小説を読みあさっていた10代の頃の記憶が、今となって蘇ってきました。

彼女のもう1つの小説に『天使の卵』という物語があって、こちらはこの『天使の梯子』の続編(であり前編)でもある。市原隼人さんと小西真奈美さんが主演で映画化されたことで有名です。知っておられる方もいるのでは。

 

もうね、何がいいかって、この小説の世界観全てに、当時の僕も、そして今もずっと惹かれているのですが。

フルチンの孤独さ、寂しさは、驚くほど強烈に愛情を欲していて、一方で人を信じられない孤独さを身にまとっている中で、その心の中にある純粋な初恋のようなまっすぐな気持ちもあって。

こんな言葉を言語化できるようになったのは、ごく最近のことだけれど、それでもなお、昔からそれに似た感覚を持っていて、ただ純粋にこの小説の世界観に惹かれていました。

作者の村山由佳さんは、孤独や寂しさと対比させることで、人の温もりとか優しさ、温かさを、それもいやらしさを全く感じさせないままに描いていて。それらが日常の何気ない景色ひとつひとつの中に散りばめられていて、それがまた読んでいる僕らの心を、きゅっと苦しくさせるんです。

 

10代の頃からずっと、そして大学に入った後も、時折手に取って読み返していましたが、実はここ1年くらいは、この物語から離れていました。理由はわからないのだけれど。本当に昨日ふと、約1年ぶりくらいにこの小説を無性に読みたくなって、布団の中で読みきりました。

この物語の中で描かれる、恋愛なんだけれども、その根っこにある人間としての温かさとか優しさとか、それらが日常の当たり前の中できらめく様子とか、僕はそういったものに、ものすごく憧れていたんだなぁと。今となってはそう気付かされます。小説なんだけれども、僕の中でそれは、すごくリアリティを持ったもので、ここで描かれるものの要素を含んだ未来を、僕はどこか夢見ていたのだと思います。

 

僕自身、きっとどこかではこの物語の主人公フルチンと同じように、深い愛情を求めている。けれどそれは母親に求めるようなそれではなくて、また例えば同世代の女性をかわいいと思う、といった類のものでもなくて、その中間というか、その両方が入り混じったものなのだろうか。否、それらとは全く違うものなのかもしれない。そういった、なんとも言葉にできない温もりを求めていて、そしてそれと相反するような孤独さを感じていて。

いろんなものが、感情の想い出の箱の中にしまいこまれているようで、そしてそれらは時折、些細なきっかけで溢れ出てくるんです。まるで、僕に似た誰かのことを書いているみたい。うん。

自分ではどうしよもない感情って、あるんですね。

僕の心のアルバムにも、いろんなものが綴じられているんだなぁ。きっと。

 

もしも楽器がなかったら

いゝかおまへはおれの弟子なのだ

ちからのかぎり

そらいっぱいの

光でできたパイプオルガンを弾くがいゝ

という宮沢賢治の詩の言葉が、心にしみます。深い。

 

僕は上に引用したブログの最後に、こう書き綴っています。

誰かを愛するようになったとき、無数の影と光を音にする。

そして、みんなが遊んでいるときに、その寂しさで音を作るのだと。

孤独と、屈辱と、葛藤とで、歌を歌うのだと。

 

僕には、なぜかその気持ちと感覚が、痛いほどよく分かる。

すごく心がえぐられるような気がする。

 

生きる厳しさと、美しさを詠った、僕らへのメッセージなのかもしれません。

宮沢賢治『告別』 - 大人の少年で、僕はありたい。

そんな言葉を読み返してみると、この『天使の梯子』という小説を読んで、僕が言葉にしたかったものなのかもしれないな、と。そんな風に思っています。

 

ここまで読んでくれて、ありがとう。

 

<追伸>

”天使の梯子”という意味は、雲の合間からさす光でできた梯子のようなもののことで、僕はこの物語を読んで以来、ふと空を見上げた時に実際の「天使の梯子」をみたことが幾度となくあります。

その度に、心が震えるんです。

大切な何かを、僕らに伝えているメッセージのようですね。

 

<追伸の追伸>

天使の梯子 Angel's Ladder (集英社文庫)

天使の梯子 Angel's Ladder (集英社文庫)

 

 よかったら、ぜひ。